会社の休眠


 会社の「休眠」とは、会社の事業活動を一切停止し、文字通り会社を眠らせた状態にすることで、 会社の「休業」と呼ばれることもあります。
 会社の事業活動を停止する場合には、「廃業」という選択肢もあります。廃業の場合には、 会社の解散登記をし、清算手続きを行わなければなりません。清算手続きが完了すれば、 会社は消滅することになります。
 休眠の場合には、会社が消滅するわけではありません。休眠では、会社は存続させたまま、 事業活動を停止することになります

休眠と廃業の比較
休眠


休眠中の税金負担

税金 負担の必要性
法人税 事業実体がないため無し
法人事業税
法人住民税 法人税割
均等割 自治体によるが不要のケースも


会社休眠中も必要な作業

税務申告が必要
 会社休眠中も、税務申告は必要です。ちなみに、所得がなければ法人税は課税されませんから、 申告をしなくても課税自体には影響がありません。しかし、2年連続して期限内申告を行わなかった場合には、 青色申告の承認が取り消されてしまいます。 また、休眠中に無申告の年度があった場合には、 欠損金の繰越しの適用が受けられなくなってしまいます。

なお、事業年度の途中から休眠する場合には、営業最終日までの税務申告も忘れずに行いましょう。

役員変更登記が必要
 会社休眠中も、役員変更登記が必要になります。取締役などの会社の役員には任期が ありますので、任期満了時には役員の改選をし、役員変更登記をしなければなりません。 たとえ同じ人が引き続き役員になる場合でも、重任登記が必要になります。多くの会社では 取締役の任期は2年になっていますから、2年に1回は役員変更登記が必要になるということです。
 
POINT!!

※会社法では、変更登記を怠った場合には、代表者が100万円以下の過料に処せられるとされて います。会社休眠中も役員変更登記は行う必要があるということを認識しておきましょう。



青色申告とそのメリット

 青色申告は、日々の取引を所定の帳簿に記帳し、その記帳に基づいて正しい申告をすることで、 税金の面でいろいろ有利な特典を受けることができます。青色申告の承認を受けていない者が行う申告を 白色申告といいます。

青色申告特別控除を受けることができる
 個人事業や不動産事業を営んでいる者が青色申告をしていて、正規の簿記の原則 (一般的には複式簿記を言います。)により記帳している場合は、その記帳に基づいて 作成した貸借対照表及び損益計算書を確定申告書に添付し、確定申告書をその提出期限 までに提出する場合は、 青色申告特別控除として、最高65万円を差し引くことができます。

青色事業専従者給与の必要経費算入ができる
 青色申告をしている場合、 事業主と生計を一にしている配偶者や15歳以上の親族で、その事業に 専ら従事している人に支払う給与については、仕事の内容や従事の程度等に照らして相当である と認められる金額を必要経費に算入することができます。

 この特典を受けるためには、「青色事業専従者給与に関する届出書」を所轄税務署に提出する 必要があります。ただし、事業的規模でない不動産貸付業を営む方については、青色事業専従者 給与の適用を受けることはできません。

 なお、白色申告の場合、配偶者や親族に支払った給与を必要経費に算入することができませんが、 事業専従者控除として、配偶者は最高86万円、15歳以上の親族は最高50万円を必要経費として差し 引くことができます。

純損失の繰越しと繰戻しができる
 青色申告をしている場合、  事業から生じた純損失の金額を、翌年以後3年間にわたって、 順次各年分の所得金額から差し引くことができます(純損失の繰越し)。 また、前年も 青色申告をしている場合は、純損失の繰越しに代えて、その損失額を前年分の所得金額に 繰り戻して控除し、前年分の所得税額の還付を受けることもできます(純損失の繰戻し)。

貸倒引当金を計上できる
 事業所得を生ずべき事業を営む青色申告をしている者が、その事業の遂行上生じた売掛金、 貸付金などの貸金の貸倒れによる損失の見込額として、年末における貸金の帳簿価額の 合計額の5.5%(金融業の場合は3.3%)以下の金額を貸倒引当金として計上したときは、 その金額が必要経費として認められます。  なお、貸金のうち、貸倒れその他これに類する一定の事由による損失の見込額については、 それぞれの事由に応じた限度額までを、貸倒引当金勘定に繰り入れることができますが (個別評価)、その際必要経費に算入された金額の計算の基礎となった貸金は一括評価を行う 帳簿価額の合計額から除かれます。


繰越欠損金に関する基礎知識

そもそも繰越欠損金とは何か
 欠損金とは、法人税を計算する際の所得計算において、所得が赤字である場合の その金額のことをいいます。
 法人税法においては、青色申告の承認を受けている場合には、一定期間、その 欠損金を将来に繰り越して、将来の一定期間の間に発生した所得(黒字)と相殺 することを認めています。この法人税法の規定に基づき、繰越している過去の 欠損金のことを繰越欠損金と言います。

繰越欠損金を利用するメリット
 損金を将来に繰越すメリットは、将来の所得(黒字)と欠損金を相殺し、将来の納める べき法人税を少なくすることができる点です。以下の表では、条件を非常に簡略化して、 繰越欠損金を利用した際の法人税への影響額を示しています。
繰越欠損金の利用がない場合 繰越欠損金を利用する場合
1年目 2年目 1年目 2年目
税引前当期純利益 ▲50 150 ▲50 150
繰越欠損金 0 0 0 ▲50
課税所得 ▲50 150 ▲50 100
法人税(実効税率30%) 0 45 0 30
※税引前当期純利益=欠損金を控除する前の課税所得と仮定しています
※法人税の実効税率は30%と仮定しています
※簡略化のため、法人税の均等割は考慮していません

【繰越欠損金の利用がない場合(表の左側)】
 繰越欠損金の利用がない場合は、2年目の黒字150に対して1年目の赤字が考慮されず、 所得150に対して課税されることになります。このため、実効税率30%と仮定した場合、 45の法人税を納めなくてはなりません。

【繰越欠損金を利用する場合(表の右側)】
 繰越欠損金を利用する場合は、初年度に発生した50の赤字を翌年度以降に繰越すことができます。 このため、2年目の黒字150から、1年目の赤字50を差し引いた所得100に対して課税されることになります。 実効税率を30%と仮定すると、30の法人税を納めることになります。

 つまり、繰越欠損金を利用することで、上記の例のように、繰越した将来年度の法人税を抑えることが できるのです。




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