相続税


相続税とは、亡くなった人から各相続人等が相続や遺贈などにより取得した財産の価額の合計額が 基礎控除額を超える場合にかかる税金

相続手続きスケジュールの目安
7日以内 10日以内 14日以内 なるべく早く 3ヶ月
以内
4ヶ月
以内
10ヶ月以内 1年以内 2年以内 3年以内 5年以内
死亡診断書の取得 死体埋葬火葬許可証の取得 死亡届の提出 ・年金受給権者死亡届の提出 国民健康保険証の返却 年金受給停止の手続き 介護保険の資格喪失届 ・住民票の抹消届 世帯主の変更届 ・遺言書の調査 ・相続人の確定 ・故人の財産調査 ・遺産分割協議の開始 ・相続放棄または限定承認 ・相続の承認又は放棄の期間の伸長 故人の所得税の準確定申告 ・遺産分割協議書の作成 ・不動産の名義変更登記 ●相続税の申告 ・相続税の納付 ・相続税延納申請 ・相続税物納申請 ・遺留分減殺請求 ・埋葬料の請求 ・高額医療費の請求 ・生命保険金の請求 ・配偶者相続税軽減の手続き ・遺族年金の受給申請 ・相続税の税務調査
・・・必須手続き


法定相続人

法定相続人とは民法で定められた相続人のことをいいます。
遺言書等が無い場合、法定相続人が 財産を受け継ぎます。相続人となるのは「
配偶者 +血縁関係にある人」が原則の形で、血縁関係によって相続人となる人には それぞれ順位が決まっています

※被相続人の配偶者は常に相続人となります。
※下位順位の者は、上位順位の者が死亡や相続放棄等をしない限り相続権はありません。
 例)子が被相続人の財産を相続する場合、被相続人の直系尊属や兄弟姉妹には相続権はありません。
※配偶者が被相続人より先に亡くなっている場合は、配偶者以外の相続人が全ての財産を相続します。

第1順位 子供(子供がいない場合は孫)(直系卑属)
第2順位 父母(父母がいない場合は祖父母)(直系尊属)
第3順位 兄弟姉妹(いない場合は甥・姪)
※例えば非相続人に子供が2人いてそのうち一人が既に死亡している場合は、その子供(非相続人の孫)に 代襲相続人として相続権があります。

法定相続人の数は様々なパターンがありますので、一般的なケースのみ記載します
配偶者&子供あり 配偶者と子供の数の合計
配偶者なし 子供の数の合計
配偶者あり&子供なし&親あり 配偶者と故人の親の数の合計
配偶者あり&子供なし&親なし 配偶者と故人の兄弟の合計

法定相続分とは、民法に定める法定相続人ごとの相続額の割合のことです。但し、法定相続分は相続人の間で遺産分割の 合意ができなかったときの遺産の取り分であり、必ずこの相続分で遺産の分割をしなければならないわけではありません。
相続人のパターン 法定相続分
相続人が配偶者だけ 配偶者が全財産を相続
相続人が配偶者と長男・次男 配偶者が2分の1 長男が4分の1 次男も4分の1
相続人が配偶者と父母 配偶者が3分の1 父が6分の1 母も6分の1
相続人が配偶者と被相続人の弟と妹 配偶者が4分の3 弟が8分の1 妹が8分の1
相続人が長男・長女 長男が2分の1 長女も2分の1
相続人が父母父が2分の1 母も2分の1
相続人が被相続人の兄と妹 兄が2分の1 妹も2分の1


相続税の対象

1.相続税がかかるケースは次の3パターンです。
相続 生前に自分の財産を誰に渡すか決めていないケース
遺贈 生前に遺言書で自分の財産を誰に渡すか決めているケース
死因贈与 生前に契約書で自分の財産を誰に渡すか決めているケース


2.相続税の課税対象となる財産の例
財産の種類 具体例
金融資産 現金・預貯金・有価証券・公社債など
不動産(土地) 宅地・農地・山林・原野・牧場・借地権・地上権・貸借権など
不動産(家屋) 家屋・倉庫・駐車場・借家権・マンション・アパートなどの物件
動産 家具・貴金属・宝石・書画骨とう品・自動車など
各種権利 著作権・特許権・商標権・電話加入権・ゴルフ会員権など
事業用財産 機械・備品・商品・原材料・農産物・牛馬・売掛金など
みなし相続財産 死亡保険、死亡退職金の内、非課税額を差引いた金額など
※みなし相続財産とは「被相続人の死亡によって得られてかつお金に換えられるもの」です。 被相続人が死亡してから手に入る点が相続財産と違いますが実質的には相続財産と同じです。 みなし相続財産には生命保険の死亡保険金や死亡退職金などが含まれます。


3.相続開始(死亡)から3年以内の贈与
相続税の節税対策としてよく知られる生前贈与ですが、次の条件にどちらも該当するときは 主に課税逃れの対策から相続財産の課税評価額に計算されます。

①相続開始(死亡)から3年以内に贈与されている
②被相続人から相続人または遺言によって財産を相続した人に贈与されている

この2つの条件がどちらも当てはまれば贈与税の処理は無かったことになり、相続財産の 計算に含まれます。これを持ち戻しと言います。すでに支払った分の贈与税は各人の相続税と 相殺し、残りは還付されます。ただし、贈与契約そのものは有効です。 ※相続時3年以内の贈与額の加算ルールについて


4.相続時精算課税制度を用いた財産
贈与をするときに相続時精算課税制度を用いた場合は相続税の課税対象となります。 相続税と贈与税の二重課税とならないよう相続時に相殺されます。 2500万円の控除額が魅力的に映りますが実際に使われるケースはかなり限定されます


5.相続税の課税対象にならない財産の例
①礼拝道具や仏具
②宗教や慈善事業など公益事業に使用するお金
③心身障碍者共済制度に基づいて支給される給付金を受け取る権利
④幼稚園などに使用されていた事業用財産
⑤相続税の申告までに特定の法人に寄付した財産
⑥生命保険金の内、500万円×法定相続人の数までの金額
⑦死亡退職金の内、500万円×法定相続人の数までの金額


6.「小規模住宅等の特例」を使う場合
亡くなった方が居住していた住宅等を相続した場合には、その住宅の遺産としての評価額を 大幅に小さくしてもらえる(80%~50%)という法律上のルールがあります。この 小規模住宅等の 特例を使うためには相続税の申告を行う必要がありますから、結果として相続税の負担が0円と なる場合にも、期限までに相続税の申告手続きだけは行わなくてはならないことになります。

家屋の価額は固定資産税評価額がそのまま評価額となります。なお、貸家は自用家屋の60%または70% の評価になります。


相続税の計算方法

1.相続税の計算方法の概要
相続税の計算方法
①相続や遺贈によって取得した遺産総額の価額と、相続時精算課税の 適用を受ける財産の価額を合計します。
②①から債務、葬式費用、非課税財産を差し引いて、遺産額を算出します。
③遺産額に相続開始前3年以内の暦年課税に係る贈与財産の価額を加算して、正味の遺産額を算出します。
④③から基礎控除額を差し引いて、課税遺産総額を算出します。
注:正味の遺産額が基礎控除額を超えない場合には、相続税はかかりません。
※基礎控除額 = 3,000万円+600万円×法定相続人の数

2.相続税の計算方法の具体例
相続税の計算方法
① 課税遺産総額を法定相続分どおりに取得したものと仮定して、それに税率を適用して
     各法定相続人別に税額を計算します。
② ①の税額を合計したものが相続税の総額です。
③ ②の相続税の総額を、各相続人、受遺者及び相続時精算課税を適用した人が実際に
     取得した正味の遺産額の割合に応じてあん分します。
④ ③から
配偶者の税額軽減のほか、各種の税額控除を差し引いて、実際に納める税額を
     計算します。
calcM

※金額等を変えて 「相続税簡易シミュレータ」 でシミュレーションしてみる


遺留分減殺請求

1.遺留分減殺請求とは
 民法上、法定相続人には一定の割合で相続財産を受け継ぐことを定めた法定相続分という 相続割合いが規定されています。
 但し、この法定相続分は絶対ではなく、被相続人は遺言によって法定相続分と異なる遺産の 配分を決めておくことができ、
法定相続分よりも遺言が優先される ということになります。しかし、遺言によってあまりに著しく法定相続分を減少させることができると、法定相続人の期待を 大きく害したり、生活に不安を抱えることになりかねません。 これに対して民法上では、 法定相続人に対して遺言によっても侵し得ない相続財産に対する最低限度の権利・取り分を確保しており、 この取り分のことを「遺留分」といいます。

2.遺留分の割合
遺留分の割合は、以下のとおりです。
 ①直系尊属(例えば両親)のみが相続人の場合は、相続財産の3分の1
 ②それ以外の場合は相続財産の2分の1
 ③兄弟姉妹はなし

例1)法定相続人として直系尊属である父B・母Cがいたという場合
 ①法定相続分は各自2分の1ずつとなり
 ②直系尊属のみが法定相続人である場合に当たるので
 ③BCの遺留分は、その法定相続分の3分の1ずつですから
 ④それぞれ【2分の1×3分の1 = 6分の1】
 ずつということになります

例2)法定相続人として、配偶者Bと子CDがいたという場合
 ①法定相続分はBが2分の1
 ②CDがそれぞれ4分の1ずつとなります
 ③直系尊属のみが法定相続分である場合以外の場合に当たりますから
 ④Bの遺留分は【2分の1×2分の1=4分の1】
 ⑤CDの遺留分はそれぞれ【2分の1×2分の1×2分の1=8分の1】
 ずつということになります。

3.遺留分減殺請求の手順

 法定相続分よりも多くの財産を承継している法定相続人や受遺者に対して、遺留分に当たる部分を渡すように請求する ことになります。 遺留分減殺請求は特に決まった方式はなく、裁判外での交渉による回収もできますし、裁判所に訴訟を提起して回収する こともできます。

 ①裁判外請求
 相手方と話し合い遺留分を返還してもらうということです。 手順としては、まず相手方に遺留分減殺請求書を配達証明付きの内容証明郵便で郵送するのが一般的ですが、 請求書送付自体は必須ではなく、簡単に話しがつくというのであればあえて請求書を送る必要もありません。
 但し、合意内容については合意書を取り交わしておくべきです。支払の約束について書面化しておくことが重要です。

 ②裁判による請求
 遺留分減殺による物件返還調停(遺留分減殺調停)と訴訟があります。
遺留分に関する事件は調停前置主義がとられ、訴訟を提起する前に原則としてまずは調停を申し立てる ことが必要です。遺留分減殺による物件返還調停は家庭裁判所の調停手続です。
調停で話し合いがつかなかった場合には民事訴訟を提起することになります。


4.遺留分減殺請求の時効

 減殺の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間 行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から10年を経過したときも、同様とする。 とあります

 ①贈与または遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは時効によって消滅
  ※この「知った時」とは、その贈与等によって自分の遺留分額が侵害され、さらに減殺請求の対象となるという ことまで認識した時点と解釈されていますので、この認識がされていなければ消滅時効期間は進行しません。 相続開始等から1年以上が経過していようとも、相続開始等を知らないままであれば、時効によって消滅する ことはないということです。

 ②相続開始時から10年を経過した場合も、遺留分減殺請求権が消滅
 ※相続開始の時から10年を経過すると、遺留分滅殺請求ができなくなります。

5.法改正について

 これまでの遺留分減殺請求は、金銭に換算するのではなく、その相続財産である物などそのものを渡すよう 請求するのが原則でした。
 しかし、平成30年7月に成立・公布された民法(相続法)改正では、従来の遺留分減殺請求によって生じる 権利を金銭化し、
遺留分権利者は、遺留分義務者に対し遺留分侵害に相当する金銭の支払いを求めるのを原則 とすることなりました。

 改正後は、遺留分減殺請求ではなく、「遺留分侵害額請求」と呼ぶことになります。 この改正民法における遺留分侵害額請求の規定は、2019年7月13日までには施行されることになっています。


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